《機能性表示食品》に虚偽表示・効果過信は禁物

2023年12月7日

消費者庁は11月27日付で株式会社アリュールに対し、同社のダイエットサプリ「スリムサポ(SlimSapo)」に関する機能性表示食品に係る表示について、景品表示法違反に基づく措置命令を発出しました。

       ― スリムサポ公式販売サイトより ―


アリュール社は公式販売サイト等で未完熟リンゴ由来のプロシアニジンが、脂肪の分解・吸収を妨げて体外に排出し、高めのBMIを減らす機能が報告されている、などと表示していました。

しかし、実際にはそうした効果の根拠は認めらなかったほか、「国が激やせする効果を認めているんです!」などの表記についても国(消費者庁)が認めた事実は無く、まったくの虚偽記載であることが判明しています。

【機能性表示食品の虚偽表示】
今回、効果の根拠が認められなかったスリムサポは機能性表示食品として届出された製品ですが、機能性表示食品に関する行政処分は今年6月にも行われており、同じく届出のあった「きなり匠」及び「きなり極」と称するDHA・EPAサプリメントについて、さくらフォレスト株式会社が措置命令を受けています。

「機能性表示食品」と表示されていると、何やら国の認可を受け、効果が保証された製品のように感じますが、実際には効果を保証するものではありません。

メーカー自ら「含まれる成分の機能性について、科学的根拠があります」と主張して消費者庁に届け出れば「機能性表示食品」とうたって販売することができるのです。

    ― 機能性表示食品は保健機能食品の一部で、届け出れば表示可能 ―


一般にサプリメントや健康食品と呼ばれる製品は、医薬品とは異なり、単なる《食品》の一種ですが、中には「保健機能食品」として表示が認められる製品があります。

その「保健機能食品」には3種類あり、基準の厳しい順に①特定保健用食品(トクホ)、②機能性表示食品、③栄養機能食品類、があります。



その中で①特定保健用食品(トクホ)は消費者庁による審査を経て許可を受ける必要がありますが、②機能性表示食品については安全性や機能性の審査は行われず、科学的根拠に基づく機能性の根拠を届け出るだけで表示が可能です。

そのため消費者庁の審査を経て、認可されたり認定される、ということではありません。

         ― 機能性表示食品に審査・認可は不要 ―

メーカーが製品に含まれる任意の成分に関する機能性についての根拠を示すだけで、「機能性表示食品」と表示できてしまう点にも問題はありますが、スリムサポを紹介するWebサイトの中には「機能性表示を認定」と、あたかも消費者庁から認定されたかの表記をするケースも確認されており、届け出ただけの製品が「認定」された、つまり消費者庁が許可していると誤認させかねない点は悪質な表記といえるでしょう。


【機能性表示食品の効果を過信しない】
そもそも機能性表示食品とは、健康に良いとされる一定の科学的根拠をもつ《成分》が一定量含まれている、というだけの話で、実際に人体へ摂取したからと言って直ちに効果が出るものとは限りません。

その《成分》には乳酸菌やビフィズス菌をはじめ、DHA、EPA、ルテイン、GABA、難消化性デキストリン、ヒアルロン酸、・・・などの成分が数多く登録されており、「脂肪の吸収をおだやかにする」、「コレステロールを下げる」「腸内環境を改善する」、「記憶力を維持」、「美肌に導く」などの研究文献が報告されています。

これらの各成分そのものについては、文献の示す通りの効果が確認されているのかもしれませんが、問題はそうした成分が含まれているとしても、最終製品(商品)における臨床試験や研究データが極端に少ない点です。

どういう事かというと、機能性表示食品として届け出るには「①最終製品を用いた臨床試験」、または「②最終製品に関する文献調査(研究レビュー)」、もしくは「③機能性関与成分に関する文献調査(研究レビュー)」のいずれか一つ以上を根拠として示す必要がありますが、①および②については最終製品、つまり販売される商品の状態における試験データや文献が存在するのに対し、③の場合は商品に含まれる《成分》についての文献さえあれば良い、という事になります。


現時点(2023年12月7日)で機能性表示食品の届け出件数は7,705件ですが、そのうち①の臨床試験データがあるのは331件で全体の4.3%、②の最終製品に関する研究レビューはたったの2件(0.03%)、残りの95.2%はすべて③の《機能性関与成分》に関する研究レビューで、最終製品としての臨床試験や文献調査は行われていません。
※販売終了、もしくは販売されていない製品も含んだ件数


さらに、こうした文献は海外も含めた論文を数報集めているものの、あくまで《成分》が体内でどのような効果を示すかについての話であり、製品化された状態(錠剤やカプセルなど)において果たして体内に吸収されるのかが不明なため、もしも体内で溶けずに摂取されなければ、そのまま体外に排出されてしまう恐れもあります。

また、最終製品における臨床試験についても、健康食品と医薬品では有効性に関する科学的根拠が異なる、との意見もあり、単に有効な成分が含まれているからと言って健康増進に効果がある、とするには疑問も残ります。

いずれにしても、機能性表示食品とは「〇〇に役立つ」、「〇〇を緩和する」、「〇〇を軽減する」、といった機能があると《報告》されている《成分》が含まれている食品に過ぎず、あくまで効果が期待できる、という程度のものと認識しておくべきでしょう。

また、審査が要らないのを良い事に、届け出ればこっちのものとばかりに根拠の無い表示で消費者をだます業者が存在することにも留意し、「4ヶ月で20kg痩せた」、「認知機能が大幅に改善した」といった具体に、大きな効果をうたっている商品については十分に注意してください。

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