【職員名公開】金融庁職員をかたるLINE投資詐欺

2023年11月11日

金融庁は10日、金融庁や金融庁職員をかたった投資勧誘を行っている事例について、当該勧誘を行っている偽の事業者名や偽の職員名・役職等を公開し、注意喚起しました。
「当庁及び当庁職員を騙る行為に関する注意喚起(暗号資産取引関連)」

【偽の事業者名および職員名】
1.「ACADIAN」、吉野 直之(金融庁金融研修センター首席補佐官)
2. 「Ark invest (Ark invest Japan)(Ark)」、油布 志行(日本金融庁役員)

「ACADIAN」は「Acadian Asset Management」という米国本社の実在する企業をかたったもので、吉野 直之氏も実在する日本の経済学者ですが、勝手に名前を使われているようです。

同様に「Ark invest 」等も米国に実在する投資ファンド「ARK Investment」を装っており、油布 志行も実在する金融庁総合政策局長ですが、いずれもこのような投資勧誘は行っておりません。

これらの勧誘はLINEやFacebookを用いて行われており、架空の投資案件や投資アプリへ資金を投入させてお金をだまし取っています。

この手口はコミュニケーションアプリ『LINE』のグループ自動追加機能を悪用し、投資購入グループに招待して投資勧誘を行う投資詐欺事案と同様のケースと考えられ、投資のプロとして登場する先生役として実在の投資会社や金融庁の職員の名前が使われていると思われます。

※LINEを媒体とした投資詐欺の手口については、当法人記事「【LINE投資グループ】詐欺の手口と対処法」に詳述していますので参考にしてください。

【ディープフェイク動画も悪用】
金融庁が公開した被害事例では、ACADIANアプリを用いた投資勧誘を行い、銀行振込によってアプリ内で暗号資産を購入させていますが、アプリ残高の出金依頼に応じないばかりか、違約金の発生などを理由に追加の支払いを要求するなどしています。

また、YouTubeに吉野直之氏を装ったディープフェイク動画も投稿されており、暗号資産「SAIE」等の投資を推奨していたとのことです。

同様にArk investにおいても金融庁と連携していると信じ込ませるため、油布 志行氏を装ったディープフェイク動画をYouTubeやニコニコ動画へ投稿し、暗号資産「QXQX」「AUIC」等の投資を推奨していました。

ディープフェイクを用いた偽動画は年々増加しており、今後も実在の経済学者や有名な起業家の映像を加工・編集してあたかも本人が関与していると思わせて、偽の投資案件へ勧誘する事例が増えていく事が予測されます。

現在、国内でも盛んに「貯蓄から投資へ」と投資による資産運用が勧められていますが、投資について不慣れな初心者の場合、こうしたSNS経由やWebサイト上の偽情報に惑わされやすく、詐欺被害に遭いやすいのが実状です。

初めて投資にチャレンジするのであれば、最低限、金融庁・財務局へ登録された「金融商品取引業者」が運用している商品を選ぶこと、ETFやNISAといった基本的なしくみについての知識は必須と考えてください。

さらに購入時にかかる販売手数料や保有時に必要な運用管理費(信託報酬)や監査報酬、また売買時にかかる売買委託手数料や信託財産留保額についても把握しておかなければいけません。

この他、利益が出た場合に課税される所得税や住民税、復興特別所得税についても知っておく必要があります。

投資は預ければ自然とお金が増えていく、という単純なものではなく、預ける前や預けた後も様々な手数料が発生して元金から少しずつ引かれていきますので、トータルコストがどの程度なのかを把握しておくことも大切です。

そもそも投資は元本割れするリスクもついて回りますので、やはり一定の知識を(証券会社や銀行の言う事を鵜呑みにせず)自分自身でしっかり勉強しておくことが、怪しげな勧誘に乗らず大事なお金を守ることにつながります。

【暗号資産はリスクが大きい】
こうした投資詐欺事案でよく使われるのが暗号資産で、暗号資産への投資を勧誘されたら警戒すべきでしょう。

そもそも暗号資産自体が投機的要素の強い商品であり、その価値が国によって保証されているわけでもなく、価格も乱高下しやすいのは周知の事実です。

さらに暗号資産業者が破綻した場合、投資資金の補償が十分ではない点にも留意しておくべきでしょう。

一般の預金※1(銀行や信用金庫等の普通預金、定期預金等)の場合、預金保険制度により金融機関が破綻した場合でも1,000万円まで(1金融機関・1人当たり)保護されるほか、決済用預金は全額保護されるなど、預金者を保護する制度があります。
※1 外貨預金、国債、社債、MMFなど、また外国銀行の支店や国内銀行の海外支店は対象外

また証券会社が破綻した場合も、投資者保護基金が整備されているため投資者1人当たり1,000万円まで補償※2されています。
※2 FX(外国為替証拠金取引)など有価証券関連業務に含まれない取引は対象外

しかし、暗号資産は法定通貨ではないため、国によるセーフティネットが整備されておらず、仮に暗号資産を預けた交換業者が破綻した場合、利用者は何の補償も受けられない可能性があります。

現在、暗号通貨を取り扱う事業者に対しては各財務局への登録が義務付けられており、交換業者が倒産した場合、預けた資産に対する補償はないものの、利用者には暗号資産返還請求権の優先弁済権が認められています。

そのため、暗号資産を利用する場合には最低限、金融庁・財務局へ登録された交換業者を選ぶことと、間違っても海外の暗号資産交換業者を利用しないことが重要です。

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