野村HD・大庭昭彦氏をかたるLINE投資詐欺に注意

2024年10月29日

コミュニケーションアプリ『LINE』のグループ自動追加機能を悪用し、投資グループに招待して投資勧誘を行いお金をだまし取る投資詐欺の被害が続く中、野村ホールディングス株式会社所属の大庭昭彦氏をかたり、主にデイトレードによる高額収益が得られるとして、架空アプリのインストールと架空口座への入金を指示する事案が複数件、確認されています。


大庭昭彦氏は野村HDが運営する金融経済教育サイト「FinWing」において行動ファイナンスをテーマにしたコラムを持つなど金融業界の第一線で活躍する実在の研究者で、著作も複数あります。

また、大庭昭彦氏をかたるLINEアカウントではご本人の画像が無断で使われており、「私は野村證券で働いています・・・」などと自己紹介しているため、当該アカウントが偽物だと判断するのは難しいかもしれません。

         ― 大庭昭彦氏の偽アカウント ―


しかし、大庭昭彦氏がLINE上で投資に関連する情報提供や投資勧誘を行う事実は一切ありません※1ので、現在、これらのLINEグループに参加させられている方は直ちにグループを削除するなどブロックし、退会するようにしてください。
※1 野村ホールディングス株式会社に確認済み

【架空のトークで勧誘】
LINE投資詐欺の特徴は、グループに参加しているメンバー(全員サクラ)が、大庭昭彦氏の指導のもと、《機関取引》なる特別な取引ツール上で市場価格より5~30%程度安く上場銘柄を購入し、指示されたタイミングで売却することで数十万円の利益を得ている状況を、ひっきりなしにトーク上で披露し合う点にあります。

被害者はこうした日々のやり取りを眺めているうちに、毎日のように数十万円もの利益を得て「ベンツを買った」「今日は高級寿司店でパーティ」といった偽トークを繰り広げるメンバーの仲間入りがしたいと考え、自分もこの取引に参加したいと思い込まされてしまいます。

   ― LINEトーク上で繰り広げられる利益確定時のアプリ画面 —


そのような頃合いを見計らい、グループ内でアシスタントの役割を担う者が機関取引を行うためには、専用の機関口座(機関アカウント)を作る必要があると告げてきます。

― 大庭昭彦氏やアシスタント(白田佑美)の偽アカウント ―



アシスタントの指示に従ってQRコード等から別のLINEアカウントを経由するなどして、「TTS-MIN」と称する機関取引用アプリをスマートフォン等にインストールするよう指示されます。

この後のアカウント登録の際に、運転免許証などの身分証明書や銀行口座(利益の出金先として)の登録を求められますが、免許証などの情報はそのまま犯罪グループに転売されるなど悪用の恐れがありますので、絶対に登録してはいけません。

      ― 機関取引用アプリの登録画面 —



なお、アカウントの作成やアプリの使い方などはアシスタントと称する者が丁寧にサポートしてくれますが、このアシスタントも架空のアカウントで実在しないため注意が必要です。
※本事案の白田佑美と称する顔写真はAdobeStockのフリー画像が使われている

「TTS-MIN」と称する機関取引用アプリのインストールが完了すると、自分名義のアカウント画面が表示されますが、これは架空サイト上に作られた画面ですので、もしお金を入金してしまったとしても、金額が表示されるだけで実際にお金がプールされているわけではありません。

また、売買を繰り返すうちに利益が増えていきますが、これも架空サイトを裏で操作している詐欺犯が適当に表示させているだけで、まったくの虚構を見せられているに過ぎません。

  ― 機関口座取引アプリ「TTS-MIN」のホーム画面 ―


日々のデイトレードで見た目のお金が増えていくため、より高額のリターンを得ようと投下する資金を積み増してしまい、被害額が数百万円から数千万円にまで膨れ上がるケースもあります。

いざ、出金しようとしても、高額な手数料を請求されて最後の最後にお金を搾り取られたあげく、システムの不具合やら不正行為が見つかった、などと訳の分からない言いがかりをつけられて、1円も戻ってこないというのが実状です。


【サービスチャットで振込入金を指示される】
アプリが使えるようになると、アシスタントは次にオンラインサービスセンターへ連絡するよう指示します。

オンラインサービスセンターはアプリ上のボタンをタップするとチャットに誘導され、チャットの相手から入金の案内が始まり、第三者預託口座と称する法人口座(個人口座の場合もあり)へお金を振り込むよう要求されます。

この銀行口座は特殊詐欺などで現金回収用に使われる架空口座(飛ばし口座)で、犯罪グループは振込入金直後にお金を引き出し、一定の振込み回数を超えるとその口座は二度と使いません。

そのため毎日、利用される銀行口座が異なるため、振込を指示されるたびに銀行口座も変わります。

また、主に法人名義の口座が使われていますが、当然、証券会社など金融機関とは何の関係もない口座で、ときには個人名義の銀行口座が指定されるケースもあります。

  ― チャットによる架空口座への振込指示 ―


当然、不可解な銀行口座名に対して疑問を抱く被害者も多く、「なぜ口座名義が毎回異なるのか」「聞いたことの無い会社だが大丈夫か」といった質問をするケースもあるようですが、詐欺犯側はそうした疑問への回答のテンプレートを用意しており、《こちらは法人機関口座、つまり第三者預託口座になります。証券の第三者預託とは、投資家が自身の資金や証券を第三者機関に委託して管理・保管をしてもらうことを指します。投資家の資産は、証券会社や銀行など信頼できる第三者によって安全に管理されておりますので、市産の安全性についてはご安心いただけます。》という長々とした回答が毎回送られてきますが、まったく安心できません。

また、第三者預託(エスクロー)は主に不動産取引やM&Aのおける代金保証を第三者が請け負う手法で、投資信託等においての利用は聞いたことがありません。

このような専門用語的なものに惑わされないよう十分注意が必要です。

【投資の基本を知り、うまい話に釣られない】
LINE投資詐欺ではグループ内に数多くのサクラを仕込み、日々の株価動向や政治・経済面の最新情報を盛り込みながらトークを展開していくため、投資未経験者には何やらプロの情報交換のように見えてしまうかもしれません。

しかし、内容は単に報道されている事実をコピペしつつ感想を述べているだけの薄っぺらいもので、例えるなら《本日は九州の南海上、東経140度付近に熱帯的圧があり海面温度が30℃以上あるため熱帯的圧が発生する可能性が高いとも言えます・・・》といった気象情報をLINEでトークしているのと変わりはありません。

詐欺犯の狙いは、このグループの人たちは、先生の指導の元、指定された株の売り買いをすれば大儲けできると思わせて、機関口座やら特定アプリやらを仕込んでお金を振り込ませることです。

        ― LINE投資詐欺のだましのフロー ―


機関取引や機関口座※2、という聞き慣れない言葉に「投資家っぽい!」などと特殊性を感じて信用せず、そもそも投資を行うのであれば、ふつうに証券会社を窓口に口座開設するのが筋(法的にも)ですので、投資未経験者や投資初心者はだまされないよう十分に注意してください。
※2 機関取引や機関口座、という言葉は投資の世界にはありません。
   「機関投資家」と呼ばれる保険会社等の法人投資家を指す言葉があるため、《機関》とつ
    くとプロっぽく聞こえるかもしれませんが、まったくのデタラメです。
   また、市場の売買価格よりも格安で株式を購入することも不可能です。


LINE投資グループによる詐欺は振り込め詐欺と同じで、口座に入金したお金が戻ってくる可能性は限りなくゼロに近いといえます。

グループ内で展開されるトークは、私たちの興味関心を引くような内容かもしれませんが、世の中にうまい話や儲かる話などは絶対にありませんので、けして関与しないよう十分に注意、警戒してください。


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