2024年8月13日
「名義貸し」を理由にお金を脅し取る架空請求詐欺における新たな手口として、株の購入権や個人投資など金融商品に関連したケースが確認されてるため注意が必要です。
この手口では、被害者のお宅に金融機関の職員を装った者から電話があり、「あなたは大手製薬会社の株を購入する権利がある。権利を譲って欲しい」などと告げた後、被害者が権利の譲渡を承諾すると、今度は大手製薬会社の従業員を装う者から電話がかかり、「あなた名義で株を買われているが、本人でなければ購入することができない。監査が入ることになる。」などと告げます。
さらに、警察官を装う者から「今回の取引はインサイダー取引になる。犯行に関与していないことを証明するため、口座を確認する必要がある」、「金融庁が指定する口座に、残高を移す必要がある」などと告げ、お金を振り込ませてだまし取ります。
また、「個人投資をしませんか?」と電話をかけてくるケースもあり、「個人投資をしないのであれば名義を貸してほしい。お金はかかりません」などと巧みに名義貸しを承諾させた後、「金融庁の調査であなたの口座が凍結される可能性があるので、口座にあるお金を移転してほしい」などと告げ、これを信じた被害者が約1,000万円を振り込んでしまう被害も発生しています。
【名義貸し詐欺のしくみ】
これまでの名義貸し詐欺の基本スキームでは、老人ホームの入居権に関するものがほとんどで、詐欺犯は不動産業者を名乗って電話をかけるケースが主流となっています。
犯人は不動産会社の社員を装い、「〇〇市内にグループホームを建てることになった」、「あなたは優先的に入居できますが、入居されますか?」、「入居しないなら権利を別の認知症の方に譲るが構わないか」などと電話をかけて権利を譲ることを承諾させた後、弁護士や警察をかたる者から「〇〇市内の方が、あなた名義で契約している」、「名義貸しは犯罪なので、あなたは逮捕される」、「今なら供託金を出せば逮捕はされない」などと脅して、お金を支払わせます。
新たに確認された手口では、「老人ホームの入居権」から「株の購入権」や「個人投資」に名義貸しの対象が変わっており、お金を支払わせる口実も、「名義貸しで捕まりたくなければ金を払え」から「無実を証明するためにお金を振り込め」や「金融庁の口座へ資金を移せ」といった内容となっており、「審査で無実が確認されれば全額返金されます」などと告げて、お金をだまし取っています。
【名義貸しはキッパリ断る】
こうした手口に共通しているのは、《〇〇の権利があなたにあります》という切り口からはじまり、《必要なければ、あなたの権利を別の方に譲っていいですか》と尋ねることで、最終的には他人へ権利を譲る=名義を貸す、ことの言質を取ることです。
後で脅されたり、巧妙な罠にかかってしまわないよう、何の話であったとしても、自分の名前を使わせてはいけません。
《〇〇の権利がある》、《名義を貸してほしい》などの電話を受けたら、はっきりと「お断りします」と拒否する姿勢を示し、相手にしないことです。
【名義貸しは犯罪】
犯人は、株式を購入する権利や老人ホームへ入居する権利があなたにある、と告げた上で「必要なければ、他の方に譲ってもいいか」と権利譲渡の許可を求めてきますが、深く考えずに「権利を譲ってもいいですよ」と答えてしまうと犯人の思うつぼです。
名義を貸すだけなら、などと安易に考えてしまいがちですが、名義貸しは立派な犯罪です。
銀行口座の開設やクレジットカード発行の申込手続きの際、自分の名前を他人に使わせるのはもちろん、消費者金融やローンなど他人の借金を自分の名前で申し込んだり、会社の役員登録のために名前だけ貸すなどの行為はすべて違法です。
株式の購入名義や、老人ホームへの入居権※であっても、他人が自分名義で手続きするのであれば、それは《偽装行為》として詐欺罪(刑法246条)や私文書偽造罪(刑法159条)に問われる場合があるほか、名義を貸した側も詐欺罪や私文書偽造罪の幇助(ほうじょ)に当たる可能性もあり、ともに罰せられるリスクがあります。
※老人ホームの入居権というものは実際には存在しません
『名義貸しは違法』ということを、しっかり認識しておく必要があります。
なお、友人や知人から「借金の保証人になってほしい」と頼まれたり、「私の代わりにお金を借りてくれないか?」と持ち掛けられた場合も、後者は犯罪であるだけでなく、そもそも自分名義でお金を借りてしまえば、法律上、返済義務は契約者(名義を貸した人)に発生しますので、友人や知人が行方知れずになってしまえば、自分自身が返済を求められることになります。
仮に返済が滞れば、信販関連の信用情報機関に自分の名前が事故情報として登録され、ブラックリストに載ることになります。
どのような事情であれ、「名義貸し」は絶対にやってはいけません。