2023年9月22日
突然、訪問してきた業者が、「屋根瓦が割れているのが見えました。屋根に上って点検させてください。」などと言って屋根の点検を行い、「このままでは雨漏りして家の価値も下がる」などと強引に高額な工事契約を結ぶ悪質リフォーム商法による被害が続いています。
消費者庁は9月22日、屋根瓦のふき替えや外壁塗装の工事などを請負う株式会社エヌケージーおよび株式会社野田建工(いずれも本社:大分県大分市豊町)に対し、特定商取引法の規定に基づき、15ヵ月の業務停止命令を発出しました。
(株)エヌケージーは大分県を中心に、訪問販売型のリフォーム営業や賃貸物件を扱う不動産業を営んでおり、代表取締役である野田武正(のだたけまさ)は(株)野田建工の代表取締役でもあるほか、屋根瓦など建材各種のオンラインショッピングを運営する株式会社丸武の代表も務めています。
今回、消費者庁が処分の根拠とした違法行為はエヌケージーの社員によるものですが、もともとは野田建工が屋根リフォームをメインとした悪質な訪問販売営業を行っており、2018年10月31日に消費者庁が野田建工に対して6ヶ月間の業務停止命令を発出(当時の代表は野田正一)したのを受け、ノダホーム(株)から商号変更したエヌケージーにその業務をすべて引き継いだという経緯があります。
実際に、野田建工の人員がそのままエヌケージーへスライドしたり、営業拠点や業務システムを共用している点などから、野田建工には行政処分逃れの疑いがあり、今回、消費者庁はエヌケージーだけでなく野田建工についても1年半に及ぶ業務停止の処分を下すことになりました。
【訪問販売系のリフォーム業者に注意】
エヌケージーの手口は突然訪問して点検や軽微な工事の話を持ち掛けて家に上がり込み、まずは比較的低額な契約を締結します。
その後、「もっと大きな問題があった」「いずれは屋根瓦のふき替えが必要になる」などと高額な工事の契約を迫ります。
消費者庁がエヌケージーの勧誘手口について公表した事例をみると、最初は瓦止め工事の勧誘を行って契約し、その4日後に今度は瓦の塗装工事を勧誘しています。
瓦止め工事は、瓦をシーリング材などで固定するだけで㎡単価1,000~2,000円程度であるため、比較的契約を取りやすいのかもしれませんが、工事費用には足場設置費用も別途かかるため、どうせなら他の工事も一緒にした方がお得ですよ、などと追加工事を勧誘するのが常套手段となっています。
こうすることによって、エヌケージーは追加工事(2次契約)は訪問販売による契約ではなくアフター契約だからクーリング・オフ制度の対象にはならない、などと勝手解釈による理屈を振りかざして契約解除を拒否しようとしていました。
当然、このような主張は認められずクーリング・オフ制度は適用されますが、エヌケージーの社員は、「クーリング・オフでないから、金具はそのまま残させてもらう。1円も儲からない金具の撤去作業に作業員を手配できねえ。」などと主張して契約解除を避けようとしています。
このような場合はすぐに最寄りの消費生活センターに相談し、専門の相談員に対応をお願いする事が大切です。
訪問販売系のリフォーム会社のすべてが悪いとは言えませんが、突然、訪問してくるケースでは悪質業者が非常に多いという認識を持つ必要があります。
屋根の点検と言いながら、こっそりシール材を破損したり、瓦をずらしたり傷つけるなどして修理を迫る悪質な事例もありますが、慌てて契約せずに必ず相見積もりをしてください。
また、水回り修理に関する悪質業者でも散見されますが、インターネット広告などを見て消費者から見積依頼の電話をした場合など、訪問販売でなくても高額な契約を結ばされる事例があるため注意が必要です。
とくに《見積無料》などの表記に安心して業者を家に上げると、契約するまでなかなか帰ってくれず、消費者が根負けして高額な契約を結んでしまうケースもあります。
【瓦のリフォームは慎重に】
住宅の屋根には日本瓦をはじめ様々な素材で作られており、その種類によってメンテナンス方法が異なります。
とくに屋根瓦については本来であれば修理が必要ないケースもあり、エヌケージーが勧誘した工事内容に関しても注意すべき点があります。
<瓦止め工事>
瓦止めとは上述の通り、瓦同士を固定して風水害に備えるものですが、瓦の種類や設置状況によっては、一切、手を入れる必要がないケースがあります。
具体的には下地がきちんと施工されており、瓦が下地にしっかり食い込んでいるような場合には、瓦止め工事は不要で、逆に質の悪いコーキングを施された結果、雨漏りにつながる恐れもあります。
なお、瓦止め工事をしてしまうと、それぞれの瓦がくっついてしまうため、たとえば瓦のふき直しの際に、再利用ができなくなるという点には注意が必要です。
「瓦にズレがある」「瓦が暴れている」など、もっともらしい事を言われても鵜呑みにせず、複数の業者に話を聞いたり、見積を取った上で工事するかどうかを判断してください。
<瓦の塗装>
まず、日本瓦に代表される粘土系の和瓦は耐久性に優れており、割れていない限りメンテナンスは不要です。
そのため瓦の色を変えたい、雰囲気を変えたい、といった理由でもない限り、和瓦の塗装に意味はありません。
同じ瓦でもセメント系の瓦の場合、素材そのものに防水性もないため、塗装は必須で、定期的に塗り替える必要があります。
ご自宅の瓦がどういった種類のものか把握しておくことも大切です。
繰返しですが、こうした工事をお願いする場合は最低でも3社、相見積もりを取ってください。
工事費用の中には材料だけなく、足場設置や廃材処分費用、さらに金具や施工費用など複数の項目が含まれているため、よく比較して検討することが大切です。
【修理やリフォームもクーリング・オフできる】
「修理はクーリング・オフの対象外」、「クーリング・オフするなら違約金が発生する」、「材料も用意しちゃったし交通費もかかってる!」などとクーリング・オフさせないために事実と異なる説明や、威迫といった手段に出るケースが増えています。
しかし、リフォーム工事や修繕工事についてはクーリング・オフ制度の対象となっているほか、契約締結時には特定商取引法(特商法)第4条ならびに第5条に定める規定に基づく書面を交付する義務があります。
契約時の書面には、クーリング・オフ制度についての説明が赤枠内に赤字で記載される必要があるなど、消費者保護を目的とした規定があり、これらの規定を満たした書面でなければ、無条件にクーリング・オフを行使できます。
しかし、消費者の知識不足につけ込んで強引に契約解除を妨げる行為が後を絶ちません。
過去には下記のような違反行為が確認されています。
〔不実の告知〕
「足場などを手配しているため、クーリング・オフはできません。」
「訪問販売ではないからクーリング・オフはできませんよ。解約すると材料費、人件費で
約100万円の違約金がかかります。」
「修理であって、物は売っていないので訪問販売ではない。クーリング・オフできない。」
「違約金として契約額の40パーセントを払ってもらう。」
この社員が言っている事はすべて嘘偽りで、物を売らない修理は訪問販売ではない、などまったくのデタラメです。
また、悪質商法においては契約解除を申し出た消費者に対し、解約手数料やキャンセル料と称して高額の費用を請求するのも常套手段となっています。
しかし、特商法では実際の損害額を超える部分や、遅延損害金について年利14.6%を超える部分については不当な契約条項として無効とされているほか、上述の通りそもそも規定通りの契約書面が交付されていなければ契約自体が無効となります。
法外な金額を請求された場合はすぐに支払わず、消費生活センターなどの相談機関に話をしてから対応するようにしてください。
〔威迫による契約解除妨害〕
「なんで、そういうことをやるんだ!解約した理由は!?」
「クーリング・オフなんてできない!
本人以外から電話があったし、クーリング・オフは認めない!」
「身内でもない人にそんな話して!身内でもない人にクーリング・オフの相談しても、
こっちは認めない!」
このように大きな声を張り上げ、怒鳴り口調で主張するなど、威迫して消費者を困惑させる事例も確認されています。
これらの行為はすべて特商法違反となりますが、威圧して居座り続けるなど悪質な場合は、躊躇せず警察に通報してください。
【自宅へ呼んだ場合でもクーリング・オフできる】
悪質業者がクーリング・オフを妨害する手段の一つに、消費者自らが事業者に連絡するように仕向け、あたかも消費者主導で契約を締結したと主張するパターンがあります。
たとえば電話勧誘で「見積りだけなら無料なので見てあげましょうか」などと訪問を承諾させたり、格安料金が掲載されたチラシやインターネット広告を見て問い合わせをしてきた消費者に対し、「ちょうど今日までキャンペーン中なのですぐ見ますよ」などと訪問の約束を取り付け、やってきた作業員が作業内容などを明示しないまま修理や交換作業を進めてしまいます。
その結果、高額な費用に対して消費者が問いただしても、「あなたが呼んだから来たんだ」、「もう作業しちゃったんだから戻せないよ」などと自らの正当性を主張します。
たしかに、「〇〇を購入するので来てください」などと消費者側が購入やサービス申込の意思表示をした上で、業者を自宅へ呼ぶなどして契約を締結した場合はクーリング・オフ制度は適用されません。
しかし、実際に作業内容や購入内容、料金などが明確な状態でリフォームや修繕工事を依頼する事は通常ありえませんし、上述した通り規定を満たした契約書によって契約が締結されていなければ、契約そのものが無効となります。
悪質業者は「話だけでも聞いてもらえませんか」、「とりあえずご説明に伺います」などと食い下がり、何としても訪問しようとしますが、その裏には《訪問してしまえばこっちのもの》という下心があるので、しつこく訪問したがる業者には警戒するべきです。
中には、しっかり作業内容や見積書を確認してから契約の話をしたいという意味で、「話を聞いてから契約を決めたい」と伝えたとしても、悪質業者は「『契約を決めたい』と言われたから訪問したのだ」と言い張り、クーリング・オフ制度の適用除外を主張してくることもあります。
このように百戦錬磨の悪質業者を相手に一般の消費者がその場で対等に渡り合うのは困難と思われますので、被害を防ぐためにも、絶対にその場で契約書にサインせず、必ず第三者に間に入ってもらうか、消費生活センターに相談するよう心掛けてください。
大声で怒鳴られたり威圧的な態度で契約締結を迫って来た場合には、迷わず警察に通報してください。
【参考情報】
国土交通省をは、住宅リフォーム業者の選定に関して以下の制度を用意しています。
1)リフォーム瑕疵保険加入事業者
リフォーム瑕疵保険に加入している場合、施工状況の検査や施工後の瑕疵への保証がある。
リフォーム事業者検索システム
2)登録住宅リフォーム事業者団体
全国の安心できるリフォーム業者が検索できる。
団体一覧が掲載されたページ
また、一般財団法人住まいづくりナビセンターが運営するリフォームのポータルサイトもあります。
リフォーム評価ナビ