2023年2月16日
本日より所得税の確定申告期間となります。
所得税の還付を受けるには、必要な書類を所轄税務署へ提出する必要がありますが、「還付金があるのでATMへ行ってください」といった詐欺の電話でお金をだまし取られる被害が後を絶ちません。
今月も還付金詐欺の被害が多数発生しており、4日には埼玉県さいたま市で区役所職員をかたる者から「医療費の返金があり、期限が切れているのでATMで手続きしてください」といった電話があり、ATMへ誘い出された被害者が現金約98万円をだまし取られた他、8日には佐賀県唐津市内で市役所の職員をかたった還付金の電話を信じた被害者が、ATMへ誘い出されて約100万円をだまし取られる被害が発生しています。
この他にも還付金があるとATMへ誘い出してATMを操作させる事案や、還付金詐欺のきっかけとなる犯罪予兆電話(アポ電)が全国で確認されています。
本日も東京都内では江戸川区、墨田区、足立区、千代田区、目黒区、杉並区、大田区、江東区、小平市、東村山市などで多数の還付金詐欺電話が入電するなど、全国各地で還付金の連絡を装ったアポ電が確認されています。
【還付金詐欺のアポ電事例】
還付金詐欺の電話では、市役所や区役所の職員をかたって、以下のように様々なパターンで話をしてきます(今月確認された主なアポ電)。
・「高額医療費の還付金があります」
・「過去3年分の保険料還付があります」
・「封書でお知らせしましたが返信がありませんでした」
・「還付金は昨年12月末が期限でした」
・「本日であれば対応することが可能です」
・「金融機関はどちらをお使いですか?」
・「累積保険料が返ってきます」
・「厚生労働省から還付金が出ています」
・「手続するので、取引のある銀行を教えてください」
・「健康保険の還付金をもらいましたか」
・「青い封筒を送ったのですが返信がありません」
・「手違いで保険料の還付があります」
犯人は健康保険課や介護保険課といった部署を名乗り、2万数千円から3万数千円の還付金がある、と話すのが常套手段となっていて、「手続きには銀行へ行く必要があるが、今日ならATMで簡単に手続きできる」などとウソを言ってATMへ誘い出します。
その後、携帯電話越しに犯人の指示通りにATMを操作すると、自分にお金が振り込まれるのでなく、犯人グループの口座へ大金を振り込んでしまう結果となります。
【被害件数の多い還付金詐欺】
特殊詐欺の各種手口においてはここ数年、還付金詐欺は増加傾向にあり、2022年中の還付金詐欺の認知件数は特殊詐欺全体の26.7%を占める4,679件※1でトップとなっています。
※1 警察庁発表資料「特殊詐欺の認知・検挙状況等について(令和4年)」より
また、過去5年間の還付金詐欺の認知件数の推移を見ると、2018年から2020年までに比べ、2021年には認知件数が急増しており、さらに2022年も増減を繰り返しながら増加基調で推移しています。
【高額な被害につながることも】
還付金詐欺の被害件数は他の特殊詐欺に比べ最多となっているものの、被害総額(2022年)では53億7千万円と、オレオレ詐欺の127億965万円や、架空料金請求詐欺の100億4700万円に比べて少ない金額となっています。
これは、一般的なATMでの1日の振込限度額が100万円に設定されていることが多いため、一度にまとめて数百万円の現金をだまし取るオレオレ詐欺などに比べて被害金額そのものは低くなっていると考えらえます。
1件あたりの被害額(2022年)をみても、還付金詐欺の被害平均額は約115万円で、預貯金詐欺の約347万円やオレオレ詐欺の約297万円に比べて約3分の1となっています。
しかし、中には数百万円から数千万円もの金額を振り込まされるケースもあります。
その手口は複数のカードから順に振り込ませるもので、アポ電の段階で「銀行口座はいくつありますか」と聞かれて複数の口座を教えてしまった場合、「念のため全部のキャッシュカードをお持ちください」と言われ、一つ目の口座で振込処理をした後に、犯人が「処理がうまく行かなかったようです。これでは還付金が受け取れませんので、他のカードで再度手続きをしましょう」などと言って別の口座から振り込ませ、さらに「このカードでもうまく処理できませんね」と同様の操作を繰り返させることで、すべての口座からお金を奪い取ってしまいます。
【60代前半の方も注意】
一般的に特殊詐欺では70代や80代といった後期高齢者がターゲットにされることが多く、被害防止の観点から金融機関では65歳以上の方のATM振込を制限する動きが広まっています。
そうした状況に呼応するように、犯人が64歳以下の方を集中的に狙ってアポ電をかけている節もあり、年代にかかわらず還付金詐欺のターゲットにされる可能性があることに留意すべきでしょう。
還付金詐欺対策として、日常的に数十万円の入出金が必要でないのであれば、ATMでの利用限度額を必要最小限に設定したり、万が一、キャッシュカードを盗まれた場合でも第三者に預貯金を引き出されないよう、生体認証対応のカードに変更するといった方法が有効です。
大手各行はもとより地方銀行も含め、全国ほぼすべての銀行において、窓口で申請すれば1日の利用限度額(引出し、振込み、等)を自由に変更※2することが可能です。
※2 利用限度額は1万円単位であったり、0円に設定できたりと金融機関によって異なります。
【ATMで携帯電話は注意】
このように、還付金詐欺の多くはATMで携帯電話越しに操作方法の指示を受けて犯人グループの口座へお金を振り込まされていますので、「ATMに着いたら携帯に電話をしてください」や「携帯電話で操作方法を説明するので大丈夫ですよ」などと言われたら詐欺だと思って間違いありません。
また、ATMの周囲にいる他の方々も、携帯電話を片手にATMを操作している人がいたら、お節介と思っても中止するよう呼び掛けたり、警察に通報するようにしてください。
そもそも、役所や銀行から「還付金がある」などと連絡してくることは絶対にありません。(ありえない、「還付金あります」参照)
犯人は2万6千円の還付金があります、などと現実にありそうな金額で私たちをだまそうとしてきますが、たとえ1円でもお金の還付を受ける場合には、きちんと書類を作成して窓口などで手続きをする必要がある、ということを忘れないことです。
尚、医療費の還付など確定申告をすれば所得税の還付が受けられるケースもあり、詐欺防止ネットワークでは会員様向けサービスの一環として、確定申告期間中のサポート窓口も開設しています。
(2023年度確定申告・サポート窓口について)