2月16日から始まる確定申告期間中、詐欺防止ネットワークではネットワーク会員様を対象とした確定申告および還付申告に関するご相談の受付を開始いたします(3月15日まで)。
退職金を分割受給していたり、確定拠出年金などの個人年金を受給している方、昨年中に転職したり住宅ローンでマイホームを購入した方、増改築・リフォームを行った方は各種税額控除が受けられるため、確定申告が必要な場合があります。
会社員や公務員の方で年末調整済みの方でも、医療費や市販薬の購入金額によっては、医療費控除またはセルフメディケーション税制といった制度を利用して所得税の還付が受けられる可能性があります。
また、個人事業主の方(白色・青色申告)についても、経費処理に関する疑問や複式簿記の記帳方法など、申告準備におけるご相談も受け付けています。
なお、最大65万円の青色申告特別控除を受けるために必要な電子帳簿保存や、 e-Tax(および eLTAX)による電子申告に関しては、マイナンバーカードの登録など事前の準備が必要となる場合、紙の書類による提出となることがあります(期間中の申告が難しいと判断したとき)。
【今年度の変更点】
2023年(令和4年分)の確定申告書からは、従来の申告書Aが廃止されて申告書Bと一本化されたほか、修正申告用の第5表の廃止や、公金受取口座の登録および退職所得のある配偶者・親族の記載欄が新設されるなど、いくつか変更点があります。
また、収支内訳書についても「営業等」と「雑(業務)」の選択欄が新設されており、どちらを選択※1すればよいのかわからない、という問い合わせも増えています。
※1 通常は「営業等」で構いませんが、全前年(2020年)に雑所得(副業収入など)として1000万円以上の収入を得た方は「雑(業務)」となります。
さらに、副業については2022年10月7日付で所得区分の取り扱いに関する通達※2がなされ、事業所得と雑所得の判断基準が示されました。
※2 「副業に係る所得」に関する改正通達《「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)》
よって副業収入のある方は所得区分の判定を正しく行う必要がありますが、雑所得については前々年(2020年)の収入金額によって判断するなど、注意点もあります。
【個人事業主の方】
個人事業主やフリーランスの方にとっては、今年10月から始まるインボイス制度や帳簿書類の電子化※3への対応も必要となります。
※3 電子取引データ保存の猶予期間は今年12月31日まで
インボイス制度に関する消費税免税事業者の対応や、会計処理の方法、標準税率と軽減税率の扱いといった各種ご相談、また電子帳簿保存法についても、電子データを一切用いない場合や、パソコンやスキャナなどの設備がない場合の対応など、さまざまな疑問に対するご相談を受け付けています。
〔電子帳簿保存の注意点〕
電子帳簿保存法は今年1月に改正法が施行されましたが、その内容は非常に難解かつ複雑で、法制度が対象とする保存区分やその対応方法もわかりにくいものとなっています。
本法で義務化されたのは、あくまで「電子取引で授受した請求書等の書類」のみであり、メールやFAXを一切利用せず、相対で紙の書類だけやり取りする事業者であれば本法の対象外ですので、従来通りの方法で構いません。
しかし、インターネット上には《対象は全ての企業や個人事業主》や《白色申告者もすべて対象です》といった表現で、誰もが電子データによる保存が義務化されたと誤認させるような情報が散見され、それに伴う各種サービスへ誘導するのが目的と思われるケースもあるため注意が必要です。
たしかに上述のFAX受信についても、受信した内容を電子データとして保存するタイプの場合は「電子取引」と見なされるため本法の対象となりますが、ただ受信して印刷するだけのタイプであれば対象外となり、けして全ての事業者に電子データによる保存義務が発生するわけではありません。
慌ててパソコンやスキャナを購入したり、会計ソフトを導入するなど、商業市場のミスリードに惑わされないよう注意が必要です。
【医療費控除とセルフメディケーション税制】
医療費控除とは、課税所得額から年間の医療費や薬代が10万円を超えた部分を控除できる制度です。
医療費控除の還付申請を行うことで、所得税額を再計算して差額の還付を受けることができます。
また、医療費や薬代が10万円を超えていなくても、ドラッグストア等で購入した風邪薬など市販の対象医薬品の年間購入額が1万2千円を超えていれば、「セルフメディケーション税制」を利用して所得税の還付を受けることができます。
セルフメディケーション税制は2017年に開始された新しい制度で、医療費とは別に特定の市販薬を購入した際、1万2千円を超えた分について課税所得から控除することができるものです。
対象となる医薬品はスイッチOTC医薬品と呼ばれる、もともと医師によって処方される医療用医薬品であったものが対象で、風邪薬や点鼻薬、禁煙補助薬、胃薬、また頭痛や腰痛,関節痛,筋肉痛などの各種鎮痛剤の他、ムヒやムルコスといった虫刺され薬、水虫薬のほとんどが対象となっています。
さらに目薬や口内炎薬、かゆみ止め、下痢止め、花粉症薬なども対象となっており、ドラッグストア等のレシートに★印などのスイッチOTC医薬品とわかる表示がされているので確認できます。
尚、昨年よりスイッチOTC医薬品だけでなく、一部の非OTC医薬品もセルフメディケーション税制の対象に加えられており、今回の確定申告から控除申請が可能となっています。
この税制対象となる非OTC医薬品には、漢方薬も含まれており、かぜ薬として有名な葛根湯をはじめ、花粉症や鼻炎の予防に用いられる小青竜湯などが対象となっています。
このように、従来は認められなかった風邪薬や鼻炎剤、解熱剤、湿布薬なども対象となっていますので、日常的に購入している方はレシートの保管と記録をしておくことをお勧めします。
➡ 非OTC医薬品リスト(厚生労働省Webサイト)
➡ スイッチOTC医薬品リスト(厚生労働省webサイト)
注意点としては、セルフメディケーション税制では対象の限度額が10万円となっているため、控除できる金額は最大8万8千円までとなる他、医療費控除との併用はできません。
しかし、たとえば共働きの夫婦の場合、夫が医療費控除で申告し、妻はセルフメディケーション税制で申告するという事は可能ですので、世帯合算や世帯の中であえて別々に申請するなど、どの組み合わせが節税効果を高く得られるか、といったご相談も受け付けています。
尚、見落としがちな点として、申告年度中(2022年1月1日~12月31日)に定期健康診断や人間ドック、インフルエンザワクチンの予防接種※4などの取り組み(いずれか一つ)を行っていない場合はセルフメディケーション税制の利用はできませんので注意が必要です。
※4 新型コロナワクチンは対象外