2023年2月1日
「名義貸し」を理由にお金を脅し取る架空請求詐欺による被害が増加し続けています。
この手口で犯人はまず、不動産業者などを装って電話をかけ、あなたに老人ホームの入居権があるが、要らなければ他に入居したい人に譲ってもよいか?などと話して被害者に承諾させた後、次に弁護士や国税庁、警察などを装う者が「名義貸しは法律違反になる」ので、このままだと逮捕されるが今なら先方と示談で解決できる、などと言って現金をだまし取ります。
先月22日には鹿児島市内の高齢女性宅に「あなたの家の近所に介護施設を立ち上げます。入居される予定はありますか。」という電話があり、女性は断ったものの、翌日、別の男から「あなたは、名義貸しをしているので犯罪者になる。犯罪者にならないためには宅配便で現金220万円を送ってください。手続きが終わればお金は返ってきます。」と現金を要求され、女性はお金を支払えばトラブルが解消すると思って現金を宅配便で送ってしまいました。
【お金は戻らない】
被害者の多くは、このままでは訴えられてしまうが、示談金や供託金などで解決するのであれば、とお金を払ってしまうようですが、中には犯人から聞かされた「お金は一時的なもので、関係ない事が判明すればすぐお金は戻りますよ」という話を信じてしまうケースもあります。
そもそも「入居権」や「名義貸し」の話自体がウソですので、預けたお金が戻ることは絶対にありません。
ましてやレターパックや宅配便などでお金を送ること自体、怪しいと考えるべきでしょう。
【犯人は不動産会社を名乗る】
名義貸しに関連する特殊詐欺のアポ電では、《老人ホームの入居権》を口実に使う事がほとんどで、多くは不動産会社の社員を装って電話をかけてきます。
犯人は、東京海上日動ライフサービスのヒダカや、マツイホームのクサカ、ミツイホームズのヤマナカ、ノムラホームズのヤマシタ、などと実在しそうな社名を名乗って電話をかけてきますが、そもそも高齢者施設の入居権などというものは存在しません。
老人ホーム・介護施設のほとんどは入所条件が厳格に定められており、特別養護老人ホーム(特養)では要介護3以上の認定を受けていなければ入所できませんし、要介護1~2で入所できる特例の場合でも、認知症の診断を受けたり、家族の支援が受けられない独居世帯などに限られています。
さらに特養では、各自治体ごとに入所調整基準という点数の仕組み(100点満点)が設けられており、特養入所の必要性の高い順に優先順位名簿が作られているのが一般的で、空きが出たからと言って突然、見ず知らずの方へ入所案内が行くことも、抽選で入所者を選定することもありません。
老人ホーム・介護施設の入所の権利がある、などの電話がかかってきたら相手にせず、すぐに電話を切ってください。
【アンケート電話に注意】
特殊詐欺の前段階として、アンケートを装って被害者の資産状況や家族構成を聞き出す手口も増加しています。
その手口の一つに、「老人ホームへ優先的に入れる可能性があるので事前にアンケートしています」などと言って、個人情報を聞き出そうとするケースがあります。
老人ホーム・介護施設へ入所するには、身元引受人(保証人)が必要となるほか、収入や資産についても確認されるなど、クリアすべきポイントが多く、さまざまな基準を満たす必要がありますが、こうした点を逆手にとったアポ電もあるため注意が必要です。
【名義貸しは違法】
名義を貸すだけ、などと深く考えず軽い気持ちで承諾してしまうケースがありますが、銀行口座の開設やクレジットカード発行に自分の名前を他人に使わせるのはもちろん、消費者金融やローンなど他人の借金を自分の名前で申し込んだり、会社の役員に名前だけ貸すなど、他人に名義を貸すのは違法です。
老人ホームの入居権であっても、他人が自分名義で手続きするのであれば、それは《偽装行為》として詐欺罪(刑法246条)に問われる場合があるほか、名義を貸した側も詐欺罪の幇助(ほうじょ)に当たる可能性もあり、ともに罰せられるリスクがあります。
『名義貸しは違法』ということを、しっかり認識しておく必要があります。
ただし、『電話で話しただけ』で実際の契約手続きを行うことは難しく、うっかり「いいですよ」と言ってしまったとしても、すぐに犯罪として処罰される可能性は低いと言えます。
もしも、「あなたは名義貸しをした。犯罪だ。」などと脅されたとしても、「どうぞ好きにしてください」と相手にせず、最寄りの消費生活センターへ相談するか、警察に通報してください。