2022年12月26日
生分解性プラスチックを使用したと謳ってプラスチック商品を販売した事業者10社に対し、消費者庁は12月19日から21日にかけて順次、景品表示法違反に基づく措置命令を発出しました。
対象となった商品はカトラリーやストロー、カップ等の食卓用品をはじめ、プラスチック製ゴミ袋やレジ袋、エアガン用BB弾、釣用疑似餌など主に4種100品目以上に及びます。
これらのプラスチック商品は「堆肥化可能の生分解性」や「3ヶ月で土に還る」、「水中の微生物によって分解される」、「完全生分解性プラ」、「脱プラ対策」、「植物由来(PLA)やミネラル成分とで構成された『本物』の生分解」、「最終的には二酸化炭素と水にまで分解されます」、などと環境に優しい商品として販売を行っていましたが、すべての商品において合理的な根拠が認められず、虚偽表示である事が判明しています。
1)ゴミ袋・レジ袋の虚偽表示
〔措置命令の対象事業者と対象商品〕
・TJC株式会社
:「生分解性ゴミ袋45L」、「生分解性レジ袋 SSサイズ」、「PLAプラカップ」等
・株式会社ネットワーク
:「エコ エチケット袋」
2)カトラリー、ストロー、カップ等の虚偽表示
〔措置命令の対象事業者と対象商品〕
・株式会社BMターゲット
:「PLAフォーク・ナイフ・スプーン セット」、「PLAストロー」、等
・株式会社みやこ
:「PLA Cup」各種
3)エアガン用BB弾の虚偽表示
〔措置命令の対象事業者と対象商品〕
・株式会社セキト―
:「PGB-01 ボタニカルバイオBB弾 0.20g」、等各種
・株式会社東京マルイ
:「最上級SUPERIOR 0.28BB」、「ベアリングバイオ0.25 BB」、等各種
・株式会社晴和
:「HITCALL 0.2g」、等各種
・有限会社ライラクス
:「ハイバレットBB バイオ 0.20g 1kg」、等各種
・Guay Guay Trading Co.,LTD
:「【G-07-189】1000 shots PACK 0.20G Tracer BB (green)」、等各種
4)釣用疑似餌の虚偽表示
〔措置命令の対象事業者と対象商品〕
・マルキュー株式会社
:「パワーイソメ(極太)」、「エコギア熟成アクア バグアンツ3.3インチ」等各種
【生分解性プラスチックとは】
一般にプラスチックはどれだけ細かく破砕しても、自然界で分解されるには数百年以上かかると予測されており、海洋ではマイクロプラスチックによる生態系への影響も確認されています。
こうした中、自然界に悪影響を与えないよう、微生物の働きによって分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水になる生分解性プラスチックが商品化されており、従来の土壌やコンポジット内における生物分解だけでなく、海洋中の微生物によって分解可能な「海洋生分解性プラスチック」の開発も進んでいます。
ただし、生分解性を有するプラスチックは従来のプラスチックに比べて高価で、従来のPPやPEに比べて2倍から数倍のコストがかかるとされています。
それでもサバイバルゲームのようにエアガン使用後の回収が難しいBB弾などの場合、生分解性プラ商品を使用する事で環境負荷を減らすことができますし、釣用疑似餌も生分解性プラの商品であれば海洋中で自然に分解されるため、利用者は多少のコストがかかっても自然に優しい商品を選択することができます。
このように差別化された商品であるにも関わらず、実は生分解性を有していないという事であれば、これは大いなる欺瞞であり消費者軽視も甚だしいといえます。
尚、生分解性プラスチックと混同されやすいものに「バイオマスプラスチック」と呼ばれるものがありますが、これはトウモロコシやサトウキビなどの植物(生物)由来の原料で作られたプラスチックで、あくまで石油を原料とせずに植物などのバイオマスを使っている、という事ですので、けして自然界で分解されやすい、ということではないので注意が必要です※。
※生分解性を有するバイオマスプラスチックも開発されています
【どのように識別すればよいのか】
今回、消費者庁が指摘した商品以外にも生分解性プラスチックと誤認しかねない商品が散見されますが、生分解性プラスチックを識別する方法として、『生分解性プラマーク』が一つの指標となります。
これは、日本バイオプラスチック協会(JBPA)が定めるバイオプラスチック識別表示基準を満足するプラスチック製品(中間製品を含む)にシンボルマークの使用が認められる制度です。
『生分解性プラマーク』のほか、上述のバイオマスプラスチックの中でも生分解性を有するものについては『生分解性バイオマスプラ』マークの使用が認められていますので、この2つのマークが確認できれば、生分解性試験により生分解性がきちんと評価されたものだと判断することができます。
尚、今回の措置命令対象となった商品の一部に「生分解性」や「ECO」の文字を使用したロゴが表示されていますが、これらは公的機関による認証マークではありません。
多くの企業の商品サイトにおいて、主にグリーン色のエコマークらしきロゴが多数見られますが、そのほとんどが単なるイメージで使われており、根拠薄弱なケースが散見されます。
中にはまじめに環境負荷などを調査した上で独自の認証マークとして表記している企業もありますが、私たち消費者にはわかりにくいものです。
現時点で生分解性プラスチックを正しく見分ける基準としては、『生分解性プラ』マークや『生分解性バイオマスプラ』マークの有無で判断するのが安心といえます。
環境に良いという理由で商品価格は高いものが多いですが、私たち消費者もその商品価値を正しく見極める目を持つ必要があります。